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皆さんこんにちは!
新年を迎え、いよいよ年度末が近づいてきました。この季節は美術大学にとって、学生たちが集大成を発表する「卒業制作展示」のシーズンでもあります。
弊社デザイナーも先日、武蔵野美術大学の2024年度卒業・修了制作展を訪問しましたのでその内容をご紹介させていただきます!
卒展について
そもそも、美大の卒業制作展示というものは、学生たちが在学中に培った知識や技術を表現した作品が展示される場です。スタイルや表現方法は異なりますが、学生たちがこれまでの人生で育んできた思想や価値観がそのまま反映されており、一般の展示とはまた異なる魅力があります。
武蔵野美術大学に限らず、卒業展示は入場料や閲覧料がない事が多いので、新しい考え方を知るためのインプットの機会としてはぜひチェックしておきたいですね!
本年度の武蔵美の卒展はすでに終了してしまっているので、この記事を通じて会場の雰囲気を感じ取っていただければ幸いです。
2024年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展 鷹の台キャンパス
2025年1月16日(木)~1月19日(日)9:00~17:00(最終入場16:00)
東京都小平市小川町1-736
造形学部全学科、造形研究科全コース、造形構想学部映像学科、造形構想研究科造形構想専攻映像・写真コースの学生による作品が展示されます。
立地
武蔵野美術大学の最寄り駅は鷹の台駅です。
駅から大学までの道のりは1.6kmほどあり、約20分歩くことになります。革靴を履いていってしまったのでなかなかに脚がつかれてしまいました。
周辺は別の学校があったり、公園で子どもたちが元気に遊んでいたりと静かで非常にすごしやすそうな町並みでした。また、大学が近くなると学生向けのアパートが立ち並んだり、画材屋や個人経営の飲食店あったりとまさに美術学生の街、といった雰囲気になってきます。
こうした大学をとりまく周辺環境も、制作への没頭を後押しする要因になっているのだと思いました。
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校舎内の様子
大学に近づくと、象徴的な四角形の門が印象深い武蔵美の校舎が見えてきます。
敷地内に入るとタープの下で学生たちが案内をしていたり、パンフレットを配ったりしていました。私達の入場時にはすでにパンフレットがすべて配布され終えており、多くの来場者があったことが伺えます。
その先の階段を進むと、さっそく学生の作品が見えてきました。校舎全体のスペースを使って学生の展示が随所に点々としています。
武蔵美の生徒数は一学年で900人を超えます。鷹の台キャンパスは造形学部のみの展示となっていますが、単純に数百もの作品がこの校舎内に敷き詰められているということになるのですごい数と密度ですね。
印象深かった作品
ここからは実際に見て印象深かった作品を3つご紹介いたします。
1つ目は デザイン情報学科 の MEMORISE という作品です。
作者自身の兵役の経験を追体験するゲームで、実際にコントローラを握ってゲームをプレイすることが出来ます。キャラクターデザインやキャラクターモーション、マップなどが非常に細かく作り込まれており一人の学生が制作したとは思えないほど完成度が高かったです。
降雪や暗めのトーンの演出が、彼の兵役経験が決して楽ではなかったことを伝えており、なんとも言えない感情になりました。
2つ目が 空間演出デザイン学科 の 千葉海舟さん の作品です。
このトンネルのような構造体そのものが作品となっており今回の展示のために作られたものだそうです。コンクリート造りの校舎に溶け込んでおり、普通に歩いていたら作品と気が付かないレベルに技態しています。
こんな大掛かりなものを作ることがすでにに大変な労力だと伝わるのですが、中に入り先に進むとさらに作品の秀逸さに驚かされます。最深部が一本のスリットのある壁になっていてそこから中庭からの外光が神々しく差し込むよう設計されていました。
美しい演出とそのための戦略深さに圧倒されてしまいました。
3つ目は 空間演出デザイン学科の逢坂彩さんの作品「寄生する家具」 です。
産業革命から今日まで生産された製品を生存競争を勝ち抜いた生物として捉えたうえで、もし現存する「寄生生物」の生存戦略を製品に落とし込んだ時それはどんな姿か、というコンセプトです。
コンセプトが秀逸で思わず唸ってしまいました。
利便性という軸で争ってきた製品たちに紛れてそれらに寄生する利便の枠から外れたポジションで生息する製品、という今までの製品のあり方を根底から考え直させるような作品でした。
今後の発展性も考えられる非常に良い作品だと思いました。実際に製品化されてもおかしくないのでは?と考えてしまいます。
その他展示作品
ここからは他の来場者の方や制作者本人がXに作品について投稿してくださっているのでそれらを引用する形で一挙に作品を紹介していきます。
ただ、作品数が想像以上で、すべてを見きることはできませんでした。そのため私達が見た一部の作品をピックアップしてお伝えしていきます。
工芸工業デザイン学科
空間演出デザイン学科
建築学科
彫刻学科
大学院造形研究科美術専攻日本画コース
まとめ
いかがだったでしょうか?
キャンパス全体が一つの美術館のようで、学生さんたちの熱量に圧倒されてしまいました。
展示された成果物からは、何度も試行錯誤を重ねた努力の跡が感じられました。それぞれの作品に込められた作者の情熱が、ひしひしと伝わってきました。
武蔵野美術大学の教育理念は「真に人間的自由に達するような美術教育」だそうですが、学生の作品たちから感じる創作に対する情熱が「真に人間的自由」であるためには必要な要素なのかもしれません。
仕事では様々な制約に阻まれて忘れてしまいがちな「つくりたい」という根本的な創作意欲を私も持ち続けなければならないな、と思わされ非常に良いインスピレーションとなりました。